冷却能力ってなに?
ここでは機種選定の際、冷水チラーに求める冷却能力についてご説明します。
- ※熱媒体(循環液)は、水とします。
冷却能力とは
冷却能力とは冷水チラーが被冷却物(冷やしたい物)をどの程度冷やすことができるかという目安になる重要な数値です。
通常W(ワット)で表します。ただ、kcal/hで計算した方がわかりやすいので、ここではkcal/hを採用して説明します。(1kW=860kcal/h)
この数値は熱媒体として何を使用するか。容量はどの程度か。など、各種の条件が決まって算出されます。しかし、被冷却物の自己発熱がある場合。室温との差が大きく吸熱の程度が大きい場合など。他にも各種要素があり厳密にはなかなか把握しにくい面もありますが、概略的な計算方法として以下の方法があります。
計算の考え方
- 1冷却媒体そのものを冷却するために必要な熱量 …
- 2被冷却物を冷却するために必要な熱量 …
- 3循環系で必要なポンプなど動力源(χkW)の発熱量 …
計算方法
= (T2 - T1)×V×P×C1/H
= (T2 - T1)×W×C2/H
= 860×χ×0.5(効率)
t1 =設定温度(冷却後の温度)(℃)
t2 =初期の温度(冷却前の温度)(℃)
V =使用冷却熱媒体の容量(L)
P =使用冷却熱媒体の比重(水:1)
W =被冷却物の重量(Kg)
C1 =使用冷却熱媒体の比熱(cal/g・℃)
C2 =被冷却物の比熱(cal/g・℃)
H =冷却時間(hour)
以上で得られた値に安全率(1.2~1.7)を掛けたものが求める熱量(kcal/h)です。
- ※ここでの計算は室温と冷却温度の差や配置による吸熱は無視できるものとしています。
比熱SI単位系ではJ/kg・Kですが、計算簡略化のためにcal/g・℃を採用しました。(1J=0.239cal) - ※一般的には安全率1.2~1.7程度が適当と思われますが、保冷が不充分な場合には、より大きくとる必要があります。必要熱量が合計3500W程度以上であれば安全率1.2~1.3、3500W程度以下であれば安全率1.3~1.7程度みておけばよいでしょう。
計算例1
金型の冷却に水を循環し発熱を抑えたい。
冷却しない時の水の温度は25→50℃まで1時間で上がった。
水の容量は全体で25L。
基本的に発熱を抑えるのは、25→50℃まで1時間で上昇した熱容量以上の冷却能力を与えればよいことになります。
従って、水の比重、比熱は1ですから=(50-25)×25×1×1/1=625kcal/hとなります。これに、安全率1.5として=×1.5=625×1.5=937.5kcal/h(at 25℃)以上の冷却能力が必要となります。
1kW=860kcal/hより、937.5kcal/h=1090Wですので
25℃時の冷却能力1090W以上の冷水チラーはCA-1116A型となります。
計算例2
電子顕微鏡の光源部の冷却をしたい。
できれば画像にゆらぎがでないように20℃±0.5℃程度で温調したい。
発熱量ははっきりわからないが、水を5L/minで流してみたら入口温度が15℃で出口温度は18℃で安定していた。
20℃を±0.5℃程度で温調したいということですので、精密温調タイプ冬場20℃に加温もできるヒータ付チラーを選定します。
発熱量を推算するには1時間あたりに流れた水量が受けた熱量を出し、安全率を見込んだ値以上の冷却能力があるチラーを選定すればよいことになります。
従って水の比重、比熱は1として1時間あたりに流れた水の受けた熱量は
=(18-15)×5×60×1×1/1=900kcal/hとなります。
これに、安全率1.5として=×1.5=900×1.5=1350kcal/h(at 20℃)以上の冷却能力が必要となります。
1kW=860kcal/hより、1350kcal/h=1570Wですので
25℃時の冷却能力1090W以上のヒータ付冷水チラーはNCC-3000A型となります。
- ※低温用熱媒体(ブライン関係)については、こちらをご確認ください。
- ※一般的には安全率1.2~1.7程度が適当と思われますが、槽の保冷が不充分な場合には、より大きくとる必要があります。必要熱量が合計3500W程度以上であれば安全率1.2~1.3、3500W程度以下であれば安全率1.3~1.7程度みておけばよいでしょう。